そのお店、メゾン・フェルベール(Maison Ferber)は、フランスのアルザス地方にある人口300人のニーデルモルシュヴィル(Niedermorschwihr)村にあります。

日本のある方から頂いたビデオテープに録画されていたTV番組を見て クリスティーヌ・フェルベール(Christine Ferber)さんのジャム(フランス語ではコンフィチュール)を知り、 今月初旬パリに行った際にボン・マルシェで買ってきました。 そして、ジャムを味わう前にそのビデオを再度見直している間に、そこへ行ってみたくなったのです。

その村はドイツとの国境近くだということなので、インターネットでの検索とドライブ用地図を駆使して場所を探し宛てました。 我が家からは片道860km、さすがに日帰りは無理ですが行けない距離ではありません。 その村の宿(1軒だけあるらしいのです)に予約を取るのは難しいので、ドイツ内に宿を取る2泊3日の日程で、行ってきました。

1日目はフランスとの国境に近い町カールスルーエ(Karlsruhe)で一泊、翌日の朝にホテルを出発、国境を越えてフランスに入ります。 EU加盟国同士ですので今は検問が無く止められることなくそのままフランスに入りました。

フランスへ入る検問所跡 アルザスを走る高速道

ここで気をつけなくてはいけないのが速度です。ドイツの高速道路(Autobahn)は無制限区間は本当に速度無制限ですが、 フランスの場合、特に制限表示が無い場合でも法定最高速度は130km/hなんです。速度に気をつけながらアルザス地方の景色の中を走ります。 コルマール(Colmar)を抜けてさらに走ると村の方向を示す案内板を発見、 それに従って進むと映画やテレビでしか観たことがなかった"これがフランスの田舎の風景なんだなぁ"となり、 そしてついに、ニーデルモルシュヴィル村に到着しました。

この先に目指す村があるはず 遂にニーデルモルシュヴィル村に到着

村に入ってすぐにある公共の駐車場に車を止めて、歩き始めました。 家々はドイツでも見られる木組み家も多いのですが、色使いや形がドイツのとは違います。 アルザス地方はワインで有名ですから、村にもワイン販売所があります。 その他のお店といえば、レストラン、ホテル、そしてメゾン・フェルベールだけ。本当に小さい村でした。

屋根や色使いがドイツとは違います 木組みもフランス風 村のメインストリートです

お店はすぐに見つかりました。村の真中を走るメインの通り(といってもセンターラインもない普通の道)を歩いていけば、 プレッツェルマークの看板が見えてきます。そこがメゾン・フェルベールです。

クリスティーヌ・フェルベールさんはこのニーデルモルシュヴィル村で1960年に生まれました。 パリで修業した後、故郷へ戻り、お父さんが営むメゾン・フェルベールで地元で穫れる果物を使ったジャム作りを始めました。 地元で収穫される新鮮は作物にこだわるのです。

こちらがメゾン・フェルベール この看板が目印 こちらは有名な看板犬(!?)

彼女のジャムは果実が完全には潰されておらず、味も濃くて風味も豊かなのが特徴です。 さらに果物だけでなくピーマン・青トマト・ジャガイモ等の野菜を使ったジャムを作ったり、 苺に黒胡椒、リンゴとルバーブなどそれまでの常識にとらわれない斬新なコンビネーションのジャムを作るのです。 これまでに作られたジャムは200種類以上だそうです。 そしてこれらのジャムが世界的に有名になり、超一流ホテルのテーブルに置かれるようになった今でも、 彼女はこの村に住み、このお店の厨房でジャムを作っているのです。 そう、ここから世界中に向けてクリスティーヌ・フェルベールのジャムが輸出されているのです。

ありました、ありました、あのジャムです 棚にたくさんならんでいます テーブルの上には普通の瓶のジャム

お店に入ってすぐ左側にジャムは並んでいます。赤地に白い水玉模様の布が被せられた特徴的なジャムの瓶が棚にたくさん並んでいます。 瓶には何のジャムであるかがそれぞれ書いてあるんですが、当然それはフランス語なので、私達には分かるものもあれば全く想像すらつかないものも。 テーブルの上には普通の蓋だけしてある瓶も並んでいます。種類はそれほど多くありませんが、こちらは少しだけお安くなっております(笑)。

こちら野菜コーナー 雑誌、調味料、ワインなど お惣菜やチーズも売ってます

メゾン・フェルベールはジャム専門店ではありません。 パン、牛乳、ケーキ、ハム・ソーセージ、野菜、手作りの惣菜、ワイン、調味料、そして雑誌など様々な物を売っている、 本当に村で唯一のお店です。

お店の中にケーキが入っている冷蔵庫があるんですけど(このケーキがまた凄く美味しそう!!)、 その上には何と招き猫があるではありませんか!! きっと日本の誰かからの贈り物ですね。 あとお店の扉には、可愛らしいフェルベールジャムの看板が吊り下げてありました。

ケーキ冷蔵庫の上に 招き猫が鎮座 ドアの可愛らしい看板

この日の昼食は、お店でかったパンとキュウリのサラダ、そしてエクレアにしました。 エクレアの中には苺がたくさん挟まっていて美味しかったです。 さすがはフランス、こんな田舎の小さなお店で売っているエクレアでも、ドイツのとはひと味もふた味も違います(笑)。

今日の昼食(ちょっと質素...かな?)

昼食の後は村を歩いて周ることにしました。まずは村の教会に行ってみました。 有名な建築でもありませんし、有名画家の祭壇画があるわけでもありません。 本当に普通の教会なんですが、逆にこういう普通の村の普通の教会って見に行くことはほとんど無いので、 結構時間をかけて中を見て周りました。

村の教会 祭壇左手前 全体はこんな感じです 祭壇右手前

その後も、特別な観光スポットがあるわけではありませんから、 村のちょっとした路地を入って行ったりしながら、昔ながらの家々や花壇などをを見て歩くだけです。 なんですけど、なんとも良い感じなんです。 観光客がたくさん歩いているわけでもなく、入場券売場に並ぶ人の列があるわけでもなく、 当然TAX FREEの看板なども一切見ることありません。 何に邪魔されることも無く、何に追われることも無く、昔から受け継がれてきた"時計"で生活している雰囲気の村、 そんな村の中を歩いているだけで、なんとも心地よい気分になってくるんです。

散策の締めくくりにホテルのカフェでコーヒーを飲み、ニーデルモルシュヴィル村を後にしました。

ここでお茶してきました 1724km、17時間27分、走りました!!

この日はドイツのワイマール(Weimar)まで戻ってそこで一泊、翌日にベルリンに帰ってきました。 総走行距離は1724km、運転時間は17時間27分でした。

買ってきた物、まずは当然クリスティーヌ・フェルベールのジャム、 この地域で作られているワインでリースリング(Riesling)とゲヴルツトラミネール(Gewurztraminer)を1本ずつ、 クグロフ(ブリオッシュに似た王冠の形をしたパン)、それからお店で売っていた小さなミルクポットです。

これが有名なジャム、大事に味わいます ワイン2本 クグロフ ミルクポット

人口300人の村のお店メゾン・フェルベールで作られ売られているクリスティーヌ・フェルベールのジャム。 世界的に有名になった今は、わざわざここへ行かなくてもパリの有名デパートでも、そして日本でも買うことが出来ます。

それでも今回、ここへ実際に行ってみて本当に良かったです。 これからはこのジャムを食べるたびに、ジャムの豊かな味と共に、あの村あのお店を感じることが出来るのですから。

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