今回は美術工芸博物館(Kunstgewerbemuseum)をご紹介しようと思います。 場所はベルリンフィルハーモニー(Berlin Philharmonic)のお隣にある文化フォーラム(Kulturforum)の一画で、 ほとんどのガイドブックに掲載されている地図で十分に場所が分かると思います。 ヨーロッパ各地で中世から現代までに製作された工芸品がたくさん展示してあるというミュージアムです。

こちらが美術工芸博物館の大きな建物 入口はこちら、普通に博物館の入口です

工芸品ということで、どんなものが見られるのかなぁという感じの期待度だったんですが、 実際に中に入って見てみてビックリ。ここって凄いんじゃない!? ということで、今回ご紹介しようと思ったわけです。 といっても、この博物館は大きくて展示物も多いので、とても全てをご紹介出来ませんので、 写真に収めた中からピックアップしてお届けします。

豪華な銀細工の表紙を持った本、そして美しい装飾の施された木製キャビネットはまさに工芸品という感じですね。 1500年代の航海用具は天文学の知識を使ったもので、実用性は当然のことながら機能美を備えた一品でした。

どちらも本の表紙 キャビネット、1650年製 天文学を使った航海用具、1574/81年製

ガラス製品は、透明のガラスに細かい模様が細工されたもの、ルビー色のものやサファイヤブルーみたいな 美しい青色のガラスの作品の展示されてました。よくこれだけのものが残っているなぁと。 やはり地震が少ない諸国では壊れずに残っていく確率も高いのでしょう。 そして、一目で和風だと思って見てみれば、やはり日本の伊万里で、18世紀初期のものでした。 1640年代から18世紀初頭のものを古伊万里と呼ぶそうなので、これもぎりぎりその仲間でしょうか。さて鑑定金額はおいくら!?

美しいルビーガラス、1698年製 もの凄く細かい模様!! こちらは18世紀初期(01-25)の伊万里焼き、鑑定団での評価額は!?

18世紀の中頃から後期のマイセンも多く展示されてます。 欧州で最初の白地の磁器製造に成功したのが1709年、アウグスト2世がその秘儀を他国に漏れないようにと マイセンにある堅牢なアルブレヒト城に磁器工場を作ったのが1710年で、ここから世界的に有名な超高級磁器工房マイセンが始まりました。 アウグスト2世は重厚なバロック調を好んだのですが1733年に没。それ以降は優美なロココ様式へと転換が計られたので、 ここに展示されているのはその頃のマイセンですね。 マイセンと並んで世界的に有名な高級磁器工房KPM(カーペーエム)は1763年に誕生します。 KPMとはベルリン王立磁器製陶所(Koenigliche Porzellan Manufaktur-Berlin)の略で、その名の通り、時の国王フリードリッヒによって作られたものです。 ベルリン生まれのKPMですから、ここにも名品がたくさん展示されているのも当然ですね。

18世紀後期のマイセン これは1733-65年製というマイセン ベルリンの磁器工房KPMもたくさん こちらのKPMは1813年製

大物も展示されています。人間の背丈をはるかに超える高さの重厚な箪笥、見事な木目の書き物机にテーブル、 豪華な装飾のセンターテーブルやキャビネットなどなどです。どれも1700年代から1800年年代にヨーロッパで製作された まさに歴史有る工芸品であります。

パリで1770年製造の書き物机 18世紀にベルリンで作られたテーブル ベルリン1877年製の食卓飾り 1705年製キャビネット

お城で使われていた家具一式の展示は、派手な豪華さではなくて重厚で実用的でありながら美しいという感じでした。 パリで製作された旅行必需品も見ごたえ十分です。ナイフ・フォーク・スプーンに皿、ティーカップ、鍋、ポット、燭台、 様々な大きさの入れ物やらブラシ、ピンセット、詰めきりようような物までとにかくいろんなものがギッシリで、 しかもそれが綺麗にデザインされています。フランス人は昔から"お洒落"だったんでしょうか。 そして次に私がビックリしたのが巨大なタペストリーです。こういう巨大なタペストリーを前回観た場所は、 それはヴァチカン美術館なのです。説明プレートを確認するとやはりベルギーのブリュッセルで16世紀に製作されたものでした。 ヴァチカン美術館で解説を聞いて知ったのですが、これだけの大きさのタペストリーを作るためには、 これだけの大きさのタペストリーを織ることが出来る織機がないと出来ないわけです。 ヴァチカン美術館にあるタペストリーもブリュッセルで製作されたもので、1523-34年頃に製作されたものとされています。 ということは、ほぼ同時期か直後に製作されたものといえるわけで、凄いもの持ってるじゃないですか、ここの博物館は!!

17世紀前半のお城の家具一式 1807年製作の旅行必需品はパリ製 タペストリーがあるとは、しかも1535年製!! 14世紀末の司教冠まで!!

展示物は古いものだけではなくて、近代・現代のものもたくさんあり、特に椅子とテーブルが多く展示されてました。 座り心地の良さそうなものからデザインはともかく実用にはちょっとねぇと思ってしまうものまで、いろいろありました。 Philippe Starckという人の椅子には、ご本人の直筆サインが書かれてました。

Egon Eiermann、1949-68年の作品 デザイン工房のプロトタイプだそうです Philippe Starckの直筆サイン入りも

日本人の方の作品もありました。Machiさんと言われる方の焼き物です。それからピカソの焼き物も。 皿の絵付けは、いかにもピカソという雰囲気で描かれてますね。そのほかには、いろいろとオブジェなんかもありました。 一目見て分かるものから、説明プレートで確認しないと何だか分からないものとか、いろいろです。

こちらは日本人Daigo Machi氏の作品 Pablo Picasso、3つのファヤンス陶磁器 Frank Steyaert、セラミックの"ボート"

後は一般企業の製品が展示されているコーナーもありました。おそらくデザインが優れているという観点なんでしょう。 確かにBRAUNのレコードプレーヤーは、なかなかお洒落な感じだと思いませんか? ルフトハンザのは、 こういう食器で機内食を出してもらえる"席"に座ったことが無いので、大変勉強になりました(笑)。 あ、右上のはエコノミー用かな!? どっちにせよ、ヨーロッパ内の短いフライトでは、サンドイッチしか出てきませんが。

BRAUNのラジオ付レコードプレーヤー ルフトハンザ航空の機内食の食器セット 有名なIittalaの"Minimal Design"

訪れた時は、ちょうど『スカンジナビア・デザイン』という企画をやっていた様子で、 椅子、携帯電話、掃除機、スーツ、ポスト、オブジェ、その他いろいろと展示されてました。

Sony Erisccon カメラ付き携帯 Henlly-Hassen レスキュー用 S.H.Nissen デンマークのポスト

というかんじで、展示物のほんの一部ですが、いろいろと紹介させていただきました。 古い物から現代のものまで、そして中には貴重な品まで、ホントにいろいろ見られて楽しい博物館ですよ。 だって、古いマイセンやらKPMやら伊万里やら、16世紀のタペストリーもあれば、すごいデザインの椅子もある(笑)。 建物も大きくて展示物も多いので、ひとつひとつしっかり見て周ると2〜3時間はかかりそうなほどです。 ところがですよ、日本のガイドブックでは、この博物館の扱いが低い!! 日本で最もよく知られている有名なガイドブックの場合、文化フォーラムの中にこの博物館があると文中に出てくるだけ。 最近出た別のガイドブックでは、紹介されているけど、星が1つ(3段階評価で一番下)!! でも、ここは十分に楽しめる博物館ですので、観光ルート計画の中に是非とも混ぜてみてください。

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